2013年1月20日日曜日

上村オフィス訪問


 まだ雪の残る冬の日。「モダニスト 上村一夫の世界」の展示作品を選ぶため、恵文社・堀部氏とともに、都内某所にある上村一夫オフィスを訪れました。

 今回の恵文社での展示は、タイトルとおり、上村一夫の「劇画」のみにおさまらないモダンなクリエイティヴィティにスポットを当てようというもの。阿久悠との運命的な出会いの場として『関東平野』でも描かれた広告代理店・宣弘社勤務の無名時代から、デビューして、売れっ子劇画家として多忙を極めた70〜80年代まで、上村一夫はイラストレーターとして多くの商業仕事を手掛けています。


 その膨大な作品群から、上村汀さん(現在、上村一夫オフィスをとり仕切る娘さん)のナビゲーションのもと、あらかじめ目星をつけていたものを拝見&チョイス。本やポスターやレコードといった複製品も、今となってはめったに見られない貴重なものが多く、また漫画出版物も当時のものはデザインや装丁など、今みてもグラフィカルで刺激的。上村ファンならずとも、デザイン好き、印刷物好き、ビンテージ好きにはたまらないものがあります。個人的には汀さんのお母様(上村一夫夫人!)から、若き日のエピソードを伺えたのにも感激。
 
 展覧会の詳細については、追ってここで紹介していく予定です。どうぞお楽しみに。


2013年1月18日金曜日

はじまりは同棲時代


 





 個人的な上村一夫との出会いは、遡ること17〜8年前。サニーデイサービスの『若者たち』のジャケットに記された、たくさんの漫画や映画のクレジットの中に“『同棲時代』上村一夫”の文字があった。そして当時、文庫で出ていた『同棲時代』を入手。次郎と今日子の愛の世界に魅了されたのでした。(ちなみに文筆家の甲斐みのりさんも「若者たち」がきっかけで、上村一夫を手に取ったそう。私たち世代のある意味、スタンダード?)

 そもそもはガロ系漫画家の安倍慎一が美代子(安倍作品のミューズで後に妻となる)と暮らす阿佐ヶ谷のアパートを訪れた上村一夫が、二人の暮らしぶりに感銘を受け、作品化のヒントを得たという『同棲時代』は、'72年に連載が開始すると同時に、若者たちの新しいライフスタイルの象徴として一大ブームを巻き起こしたといいます。そして現在、結婚しない男女関係が珍しくなくなり、“同棲”という言葉はいまやノスタルジックなムードすら漂わせているけれど、仕事も恋愛もセックスも、二人の未来も宙ぶらりんゆえに美しく儚い若者たちの愛の物語は、なんら古びることなく読む人の心を揺さぶるのです。

私自身、二十歳の頃には次郎と今日子のひたむきな愛に憧れはすれど、今日子の狂気までは到底理解できなかった。それが三十路になって読むと、今日子の苦悩が痛々しいほど沁みたり、愛から逃れようとした次郎の弱さ(なのか?)に共感したり。また結婚して子供ができた今再び読み返すと、以前はスルーしていた今日子と母の愛憎にぐっときたり。読む人の年齢や立場によって、いろんな読み方ができるのも、上村作品の深イイところ。

 ちなみに「同棲時代」は現在までに何度も再販されていますが、ヴァージョンによって収録作品が微妙に異なり、装丁もそれぞれに素敵なので、すべて集めたくなります。
 上村作品を未体験の方は、まずは「同棲時代」を入り口にしてみてはいかが?



 


2013年1月11日金曜日

ごあいさつ

今春、3月26日(火)〜4月8日(月)に京都・恵文社一乗寺店で上村一夫の展覧会が開催されます。本ブログではその詳細について、現在製作中の上村一夫に関するリトルマガジンについて、そして上村一夫について、あれこれ綴ってゆきます。


おりしも本日、1月11日は上村一夫さんの27回目の命日。昭和を駆け抜けた天才のヴィヴィッドな魅力をあたらしい時代に受け継いでゆきたいーーなんて大それた使命感もなくはないけれど、とにかく上村一夫の世界が好きで好きでたまらない。そんな想いばかりで至らぬ点も多々あるかとは思いますが、どうぞよろしくお付き合いください。


恵文社一乗寺店の店長・堀部氏のブログで展覧会「モダニスト 上村一夫の世界」の情報がアップされています。あわせてご覧ください。